*あたしの好きな人*
玄関までの道のりを、
桜井龍の半歩後ろに並んで
歩いた。
まだちらほら残っている
女子生徒の視線が突き刺さる。
痛い。
恥ずかしい。
こわい。
だってあきらかに睨まれてるし。
それなのに、
桜井龍は平然な顔をして
さっさと歩いていく。
ほんとにあたしみたいな奴といて
いいのかなぁ‥‥
なんてあたしらしくないことを
思ってしまう。
いつもは男のほうがあたしに
釣り合うようにしてきた。
でもこの人は違う。
なにか特別なオーラがあるというか
あたしがこの人に合わせなきゃいけないような感じ。
だんだん桜井龍の背中が遠くなって距離があく。
すると突然、何か焦ったように
桜井龍が振り返った。
「お、お前歩くのおせーなぁ。」
「あ、ごめんなさい!」
あたしは小走りで桜井龍の
近くまで行った。