リューベル王物語
「ピノア、先に帰ってろ。」
リクはピノアの耳元に
口を近づけてささやいた。
ピノアは
その言葉の意味よりも先に、
耳元に伝わる息遣いに
身体の中心が痺れるような感覚を覚える。
「早く、行け!」
リクが小声でたたみかける。
でも、リクは一体何をするつもり?
「だめよ。一緒に帰りましょう。」
一応ピノアは言ってみたが、
こういう時のリクは
何を言っても聞かないことを
ピノアはよく知っていた。