SEASON
最初のバンドのライブが始まったんだってわかった。

緊張が最高潮に達し、落ち着かせるために大きく深呼吸をしたら風幸に頭をくしゃ、とされた。

「緊張し過ぎ。緊張するなとは言わないがもう少しリラックスしろ。なにも失敗したら人生の終わりじゃないんだからな」

「あは、もう少し落ち着きたいんだけどどーしても…ね」

「どーしても、ねぇ?一旦ギター置いたら?」

「でも…」

ちゃんと練習通りに弾けるか心配で不安に押しつぶされそうなのにギターを置くなんてあたしには勇気がいる行動だ。

なかなかギターを置かないあたしを見て風幸は近くにある椅子を適当に取って座った。

「本番前に弦が切れるとか最悪だろ?換え持って来てないみたいだしな。チューニングくらいにしといたほうがいいぞ。それとあること教えてやるよ」

「あること?」

「そ、あること。聞きたかったらギターから手、離せよ」

これが風幸の優しさなんだなと噛み締めつつ惜しい気がするけどギターを置いた。

そして風幸を見ると笑いかけてくれた。

「俺らのバンド名の由来知ってるか?」
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