SEASON
カジさんをフォローする前に千明もポツリ。

「ほんならマスターはグレードアップしたオッサンやな」

その直後にゴツ、とマスターがグーで千明の頭を叩いていた。

千明、懲りないって言うか学習能力ないって言うか…。

痛そうに頭をさする千明に同情を覚えながらもバカだなぁと思う。

「じゃ、本当に敬語禁止だからな?捺未」

ジンさんの粘り強さに負けてあたしは頷いた。

それを見計らったようにアラタさんが「俺もな?」と。

…はい、頑張らしていただきます。

それからはお酒の力もかりてどんちゃん騒ぎであたしだけが妙に浮いてた。

お酒飲ましてもらえないし、酔えないし、お酒の匂いでテンション上がるわけでもないし。

でも、楽しくないとは思わなかった。

そりゃ時々相手にされない時もあったけど、この雰囲気だけで十分。

マスターが隣で時々話相手になってくれたし。

あたしも千明たちのバカに笑った。


この時、千明に見られてるなんて全然気づかなかったのはあたしが鈍いからなのかな。


時計の針が11時を差し掛けた時、慌て陽生が近寄って来て、不思議に思いながらも陽生の言葉を待つ。
< 45 / 128 >

この作品をシェア

pagetop