SEASON
「わりぃ、時計見るの忘れてた。こんな時間になったけど送ってくから」

「え?い、いいよ!あたし一人で帰れるし陽生お酒飲んだでしょ?」

「こんな時間に女一人は危なねーよ。それに俺酒のんでないし」

そう言うと陽生は自分のグラスをあたしの目の前に掲げる。

中身は――――アップルジュースだった。

反強引に陽生の車に乗せられ車が発進する。

住所を聞かないって事は前、タケ兄と一緒に来た時に覚えたのかな。

運転する陽生は真剣で別人みたい。

これがカッコいいって言うのかな。

…多分カッコいいんだろうな。あたしにはよくわかんないけど。

運転のために前を見据えている陽生があたしを見ずに口を開く。

「ホントごめんな。予定では9時までには送ってくハズだったのに。あれだったら俺がご両親にちゃんと話つけるから」

「別に大丈夫だよ。いつ家に帰ってもいいし」

「どういう意味?」

「あたし、あのアパートで一人暮らししてるからどんなに遅くなろうとも関係ないし、心配されることもないし」
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