SEASON
「その怪我のせいで辞めたんか?」

「……うん」

「靱帯損傷か?」

そんな生易しいものじゃない。

靱帯損傷だったらどんなにいいことか。

「え?」

無意識に声にだしていた事に千明の言葉にはっ、と気がついて無理やり笑顔を作り立ち上がった。

「充分休憩とったし、次やろっか」

立ち上がったあたしをじーっ、と見つめる千明に全てを見透かされそうで怖いと思った。

表面上だけじゃなくて心の奥にある黒いところまで見られてるように思えて気が気じゃなかった。

そして千明は決定的な一言を落とす。

「なんでそないな顔して笑うんや?」

「え?」

今度はあたしが聞き返す番。

最初は何を言われてるのかわからなかったけど顔が固まるのは感じた。。

「今にも泣きそうな目して、無理に笑うとる。それで楽しいんか?」

「あ……えっと」

口ごもるしか出来なかった。

初めて他人からそんなこと言われた。

それも知り合った1ヶ月くらいしか経ってない男の人に。
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