SEASON
よいしょっ、と言って千明は立ち上がり、さっきの真剣な顔とは打って変わり、いつものあの笑顔をあたしに向けてくれた。

「わいのお節介かもしれんけど、そない内側にばっか溜めんことや。一応捺未もSEASONの一員やねんからわいとか風幸に相談したらええ」

あたしの頭をクシャ、っと撫でて「あ、陽生はあんまお勧めせないけどな」と言って立ち去った。

千明が触っていって乱れた髪を手くしでとく。

まだ千明の温かさが残ってるみたいで、髪を少し強引にといた。

笑顔を見透かされたのは初めてだ。

気にかけてくれたのも初めて。

今まではあたしが笑ってるだけでスムーズに事が進んだ。

泣きさえしなければ平和に過ごせた。

上位の成績をキープしていれば嫌みを言われる回数が少なかった。

今までこうして自分を偽ってきた。

自分を隠してきたのに今更なんなの?

もう、素直に笑えないよ。

もし、もっと早く、あたしがこんなに大きくなる前に千明のあの言葉を聞いていたら素直に笑えていたかもしれない。

他人の言葉に一喜一憂していたかもしれない。
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