SEASON
天使のような微笑みに千明じゃないけど顔がほころぶ。

「ちーね、捺未ちゃんのこと――――」

「それはええやろ」

高倉さんの言葉を遮り、人が目の前にいるのに高倉さんに何も言わせないように千明はキスをした。

それを見てカジさんは大きなため息をつく。

「誰も高倉のこと取らねーよ。それに高校生もいるんだぞ?少しは考えろ」

「あたしは別に慣れてますけど?」

あたしがいるから考えろと言っている風に聞こえて、あたしは大丈夫とカジさんに言ったら少し驚かれた。

「慣れてるって…今時の高校ではこんなの日常茶飯事なのか?」

「いえ、学校は普通ですよ?」

まぁ、なりふり構わない人たちもいるけどそれはごく一部。

慣れてるのはあたしが育った環境だからかな。

「兄弟が連れ込むとか?」

「それは絶対ないよ!」

すごい勢いで否定するあたしに不思議そうな顔をカジさんはした。

「んじゃ、なんで?」

「えっ…と」

あの家に帰れば女の人の喘ぎ声が聞こえてたとはさすがに言えない。

口ごもるあたしを見てあ、と何かを思いついたみたいに手を叩いた。
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