SEASON
「あぁ、遊んでるからか」

「はっ?あ、遊んでないって!」

カジさんの言葉に慌てて首を振って否定すると「冗談だって」と軽く手を振ってカジさんは笑い流した。

冗談でもそんなことは言わないでほしい。

カジさんは全然そんな気はないのだろうけど、あの人たちと同じように見られてるみたいで気分が悪い。

間違ってもあたしはあの人たちのようなことはしない。

「それにしても捺実ちゃん、話聞いてた以上にかわいいー!」

いつの間にかキスを終わらした高倉さんがあたしに抱きついた。

一瞬焦ったけど高倉さんに抱きしめられたときにふわっ、といい香りに包まれて何故か安心した。

なんの香りなんだろう?

「もっとお洒落なカッコしたらもっとかわいいのにー」

さらにいっそう高倉さんは力を強めてあたしを抱きしめる。

抱きしめられるのは別にいいんだけど、高倉さんのアクセサリーが…痛い。

「そんくらいにしとけ高倉。隣のヤツが怒るぞ」

カジさんの言葉に高倉さんはくすくすと「そうね」と言ってあたしはやっと解放された。

ちらっと千明を見ると、あまり面白そうな顔をしておらずあたしから離れてすぐ高倉さんの腰を引き寄せた。

独占欲丸出し。

ちょっと拗ねた感じの千明の顔を見て高倉さんはくすくすと笑うだけ。

千明が玩具を取られないように死守してる子供に見えて少し可笑しかった。

「移動するぞー」

存在を忘れかけてた陽生が声をかけながら出入り口に向かって歩いており、その後に風幸も付いていく。
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