SEASON
えっ、とは声に出さなかったけど顔に出ていたらしく女の人はあたしににっこり笑った。

「あたしは西木まり、よろしくね」

ウインクする目の前の人はあたしが納得していないまま演奏に戻った。

見た目ケバいお姉さんだって思ったけどギターの技術はすごかった。

失礼だけどつくづく人を見た目で判断したらいけないんたなぁって思った。

ギターが1人乱入してきたのにも関わらず陽生は気にせずに気持ちよさげに歌っていて、時たま女の人が陽生の声にハモらせてもいた。

後日風幸には「こういうことはよくある」と言われた。

よくある?乱入してくるのが?って思ったけど、女の人が入ってくることですごく楽しく弾くことができた。

いつもギターが1人であたしが間違えば大変なことになるってわかってたからいつも気を張ってた。

そりゃ緊張は必要だけど、息苦しかった。

でもあの女の人が来て楽しく弾くことを知った。

今まで何のためにギター弾いてきたのかって聞かれるともちろん「楽しいから」って答えてただろうけど、最近はそれを忘れていた。

初心忘れずべからず…だね。


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