瞼の人-マブタノヒト-
あんまりにもタケがしつこかったから
『そんなにほしいなら凌治に分けてもらいなよ。』
って、言った私の言葉はタケにとどめを刺したらしい。
ショックを受けたらしいタケはベンチまでふらふらと歩いて、そのまま横になった。
私と凌治は止めなかった。
「でも澪、誰かにあげた?」
何を?って聞かなくてもわかる。
凌治が言ってるのはチョコの話。
『ううん。誰にも。て、言うかイベント事って苦手。』
そうなんだ。ていった凌治はそのまま意地悪な顔をして
「タケじゃないけど、俺もちょっとショックだったよ。」
そう言って笑った。
『いっぱいもらってたじゃん。タケと違って。』
凌治までそんな事言う、って拗ねてみたら笑った顔とあたたかい手が降ってきた。
「でも本当に。澪からもらいたかったよ。」
そう言って街頭に照らされた凌治の笑顔はとても綺麗だった。
『こんな風にいつも口説くんだ?』
凌治はそのまま天を仰いで「俺信用ねぇーなー!!」って苦笑した。
ちょっとだけ早くなった鼓動は寒さのせい。
ばれないように少し息を吐いた。