瞼の人-マブタノヒト-
「せんせーー!!」
声を出してみてもいっこうに扉が開く気配がない。
てか、重いんですけど!!
そう思った時私の頭上を通る腕、広がる職員室の中の風景。
振り返って見ると、通り過ぎた後ろ姿が目に入る。
…凌治だ。
「澪、今の瀬戸君だよね。」
『ん、多分?』
二人とも重たい教材教材の事も忘れて、小さくなる後ろ姿を見てた。
教材を先生に渡して、ごほうびにレモンのあめちゃんを3つもらった。
廊下を歩く私とユーリからはレモンの香りがした。
「ねぇ、澪。さっきのお礼言えなかったね。」
『そだね、突然だったもんね。あとで会ったら言っとこ。』
「瀬戸君、やっぱりかっこいいわぁ~。さっきちょっとドキっとしちゃったもん!!」
ちょっと興奮気味に続けたユーリ。
『ユーリもやっぱり凌治をかっこいいって思うんだ??』
笑って聞いた私にユーリは力いっぱい答えた。
「そりゃ、かっこいいよ!!誰がどう見てもかっこいいでしょ!!」
なんだか安心した。
野間君に夢中のユーリでも凌治がかっこよくてドキドキするらしい。
なんだかすっきりした。