one.real
湿気を孕んだ空気にも、動じる事ないサラサラの髪。
ワックスで整えられていたそれは、絋哉の左手によって少し乱される。
私はそれを見て、ある種の緊張感から解放されて、ちょっとだけホッとする。
絋哉がこうしたらこのやり取りは終わりだから。
左手で髪をクシャリと乱す、これは絋哉自身も気付かないサインのようなものだった。
何かに渋っていても、最終的に納得した時、絋哉が無意識に起こす癖。
「また明日学校でね、気を付けてね」
「ん、憂水も本当に早く帰ってね?」
私が頃合いを見計らって言葉を落とすのは、 癖ではなく自己防衛。