one.real
いつも絋哉が私を見送るのは、この改札の前。
私は絋哉を見上げ、柔らかく笑んで答える。
「気にしないで?帰ったら早く休んでね」
「本当に送らなくていいの?」
そしていつも絋哉が渋りだすのも、この改札だ。
こんなやり取りをして、もう何度目だろう。
「うん、本屋さんでゆっくり本選んでから帰るから」
「付き合うのに。俺のこととか気にしなくっていーよ?」
「そんなんじゃないもの、絋哉こそ気にしないで?私が本屋さんに長居する癖知ってるでしょ」
「う、まぁ…そこは認める」
詰まった絋哉は苦笑して、髪を左手でクシャリと崩した。