one.real

宣言通り5分くらいで見慣れた通りに車が止まる。

目の前の店。昼はテラスもあるおしゃれなカフェ。夜は雰囲気あるバー。


『ありがと椎名さん。仕事じゃないのにごめんね?』


ドアを開ける前に運転席を覗き込んで微笑む。

椎名さんは首を少し後ろに動かして、横目に俺を捕らえると眉を下げた。


『…あの笑顔して欲しくてこの世界引き込んだのに、その所為で無くさせるなんてね』


力なく微笑んだ口元が切ない。
…あの時決めたのは俺たちなのに。


『アンタが“杉原碧杜”の時は、私もただの主婦。
可愛がってる男の子送るくらいなんて事ないわよ』


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