one.real

お疲れ様ー、という返事を背に部屋を出る。

腕時計を見やり電話を入れる椎名さん。そんなに押してないと思うけど。

エレベーターを待つ間に心に何も声かけなかったことを思い出す。

廊下を覗き込むように振り返ったら、当の本人が数メートル先から手を振っていた。


『おつかれっ!試写会までにはまた会おーなー』


椎名さんのお叱りはやっぱり身になってはいなかったらしい。


『ふ、わかった、連絡する』


堂々と響いた声に吹き出しながら手を振り返した。

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