one.real

行ってみたカフェは紘哉の言っていた通り美味しくて、出てきたストロベリーのムースは絶品だった。

そこでゆっくりおしゃべりをして、店を出た時にはもうすっかり夕方だった。いくら春が近いとはいっても、陽は短い。

強化部であるバスケ部に所属する紘哉が、日曜日に休みをもらえることはほとんどない。

たとえあったとしても、月曜日の朝からまた練習が待っているので、必然的に夜遅くまで一緒にいることはない。

紘哉は気にしなくていいというけれど、こうして少しの制限があった方が私は付き合いやすかったりする。

冷たいとも言えるけど、慣れてしまった今となってはこれが当たり前な気がする。

近くに居すぎて、ぎりぎりまで一緒にいてしまったら、それこそ駄目になってしまう気がするから。

そうなってしまってから離れるのは何より辛いと、私は知っている。


「もっとゆっくり話したいんだけど、ごめん」


駅について、改札まできた時紘哉は足を止めて言った。
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