私の中の眠れるワタシ

再び、静寂が訪れる。


「そうか。ありがとう。今度の恋、上手くいくといいな。」

先生の唇から発せられる、−恋−という単語に、甘く酔いしれた。


「もう、俺の事は、なんとも思っていないのか?」


どういう意味だろう?
それだったら、何だというのだろう。
何故、そんなこと、念を押すのか?

一瞬、期待してしまいそうな自分が、恥ずかしい。
どう答えるのが正解か、わからない。

この言葉の先に続くものを、誰か教えてほしい。

私には、経験がなさすぎる。
先生の声の感じだとか、それを私に尋ねる事に、どんな意味があるのか。

その心理が、わからない。


どのくらい、黙り込んでしまったのだろう。

数分、あるいは数秒だったかもしれない。

でも、私は、自分が今主役であるこの舞台を、降りたくなかった。

なんとも思ってない。
わけは、ない。

だけど、今でも好き。
そんな事話して、どうする。

もし、いつか見た、夢の中のような事が現実になったら?


私は、あの夢を未だ、やり直してはいない。
もう再び見ることは、なかったから。



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