私の中の眠れるワタシ

練習が始まる。
ソウタは私の手をとり、基礎練習を始めた。

ベーシックという、一年生の時に初めて習うこのダンスの型を踊る。

何事も、基礎ほど奥が深く、突き詰めれば実力の差がはっきりとでるこのステップを、私達は懐かしく踊る。

夏の大会は、このベーシックで競われた。
私達はこれで優勝し、後輩達の身近な手本となったのだ。


私達が踊り出すと、後輩達は一斉に注目した。

一年生達はあの夏を思い出し、あらためて尊敬の念をこめて、彼のつま先、私の指先まで視線を注いだ。

あの夏に、繋いでいた手は、力を伝えるための単なる道具のようだったが、今の彼から流れてくるのはそれ以上の、毎晩のベットと同じような熱い気持ちだった。

次はどんなステップを踏みたいのか、どんな風に表現したいのか、黙っていても感じる。


−−勝てる。

私は確信した。





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