私の中の眠れるワタシ

家の中は、美月の家を彷彿させた。

つまり、意外だったのだ。
全く物がない。
部屋の中が、無駄に広いような印象を受けた。

テレビの周りには、ダンスのビデオばかり。
この部分だけは、散らかっていた。

「毎晩、観てるんですか。」

「うん。そう。毎晩。だってヤルコトないもん。」

部屋も、踊れるようある程度広くしてあるんだと笑った。

私は悪いと思いながらもうろうろと部屋を物色した。

とりたてて気になるところは、ない。

ただ一つ。
洗面台に、五本も歯ブラシがあって、私は聞くのが怖く、ひきつりながらも

「どれだけ歯ブラシ使うんですか!!」

と笑ったけど。

彼女は、

「ああ、なんかどっか汚れたら歯ブラシでこすろうと思ってて。その掃除も忘れて、そのまま。」

と言ってケラケラ笑った。


彼女はあまりお酒が飲めないので、私達はジュースで乾杯した。

トンコツのカップラーメンを食べているセツナさんの、どうでもいいような好みがわかっただけでも、幸せに感じた。



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