私の中の眠れるワタシ

また負けて機嫌が悪い母に、真也が

「お母さ〜ん、今日ねぇ、ねーちゃん、車で誰かに送ってもらってたんだよ〜。8時過ぎてたし〜。不良!不良!」

と、送ってもらっていた事を告げ口され、八つ当たりの道具にされて殴られていても。

−−−月光は、なりやまない。


その夜、私は眠れなかった。


突然、相田先生が。

『異性』

として、私の心に住み始めた。

今まで、スーツとジャージ姿しか知らなかったのに、パジャマを着たり、トランクス一枚になったり、のびのびと寛いで、眠ったり甘えたりする。

それは、信じられないスピードで、私の心を侵食していく。

……そういえば。

交換日記をしている友達の一人に、相田先生の事を好きだという子がいたっけ。

でも、あの子は、先生の車に乗ったことなんて、ない。

おそらく、これから先も、ずっとね。
そして、あんなにいたずらっぽく笑ったり……

信号が黄色ならスピードを上げたり……

わざと道を間違えて、私を困惑させたりする事を知らない。


車の中で流れる歌も。



『私だけ。』

『特別。』

『秘密。』

『内緒。』


どの言葉にも、今までのような、同級生に恋する退屈さはなかった。


手の届かない人に、人知れず恋焦がれるという、こんな楽しさがあったなんて。


学校で注目を集める優越感よりもずっと、いい。
全く種類の違うものだ。

一人の時に何度も何度も思い出しては味わえる媚薬だ。


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