私の中の眠れるワタシ

−−壁は、あちこちが陥没していた。

へこみ、を通り越して、壁に亀裂が入り段ボールのような色の『壁紙の中身』のようなものがのぞく部分もあった。

ベットは、ひどく乱れていた。枕が足元と思われるあたりと……壁とベットの間にも一つ、はさまっていた。

家具も、どれひとつとして高級そうなものは、ない。それは、玄関にあった靴と自然に対比されてしまう。
安っぽいカラーボックスが並ぶ。それも様々な統一性のない、色と形。

勉強机は、事務所や職員室にあるような、スチール製の、グレーのデスク。
冷たい、無機質な感じは、彼女みたいではあったが。

教室の机が似合わない彼女でも、部屋になら彼女が座るに相応しい、落ち着いた机でノートを広げたりしていると思っていたが。

その予想も裏切られ、乱雑に机のはじにペンが散らかり、教科書が積み重なっていた。

部屋の隅には……
ぬいぐるみ?小さな子供が抱いて寝るような、柔らかいものが『死体』のように、山積みにされていた。

カーテンは、紫色の分厚い光を透さない質の物で、夜にはそれをピッタリと閉めて完全に下界と遮断された、美月だけの異様な世界になる事が想像された。


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