君との期待値
「夏弥っ」
少女の声に閉じていた目を開く。
そこには、
上げられた少女の腕をガッチリ掴む赤羽くんの姿があった。
「夏弥もこの先輩の味方なのね」
「味方とかじゃなくて手を挙げたらそっちの方が悪く見えるのはしょうがないだろ」
少しだけ興奮が治まったように見えた少女の手を、赤羽くんはゆっくりと離す。
掴まれていた腕はブランと下がった。
少女は後ずさりし、赤羽くんと私から少しずつ離れていく。
「私の気持ちも、拓真先輩の気持ちも知らないくせに」
悲しそうに俯きながら肩を震わせている。
拓真の気持ち……?
「辛いのは私だけじゃないんだから」
そのまま私達に背を向けて逃げるように走り出した。
私と赤羽くんはただその後ろ姿を眺める。