俺のココ、あいてるけど。
 
登坂さんがハッと息を呑む。


「・・・・ごめん。でかい声なんか出したりして。どうしても話がしたかったから」


小さくか細いものになったその声は、あたしにはなぜか泣いているように聞こえた。

登坂さんが手を離してくれたおかげで、抵抗力をなくした腕は解放され、だらりと垂れ下がる。

もう体のどこにも力が入らない。

掴まれた手首だけがじんじんと熱くうずいていて、そこだけ血が通っているみたいだ。


「・・・・なんであたしなんですか? あたしはただの社員です」

「なんで、って・・・・」

「あたしがここのみんなに言い触らすと思いますか? わざわざ噂話のネタになるようなこと」

「違う。そうじゃない」


登坂さんの手がまたあたしに伸びかけて・・・・それがためらうように戻される。

視界の端にその様子が映った。


「じゃあ、なんですか?」

「・・・・」


今度は黙られる。

重く苦しく、長い沈黙が、登坂さんとあたしの間に横たわった。

その沈黙が登坂さんの答えのような気がして・・・・怖い。
 

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