俺のココ、あいてるけど。
 
「お待ちどうさま。サバ味噌と野菜炒め、お持ちしましたよ」


と、そこに奥さんが戻ってきた。

相変わらずの笑いじわは、それだけで心をほぐしてくれる。


「ごゆっくり。今日はそんなにお客さんも多くないから、あんたたちの貸し切りみたいなもんよ。気の済むまで話して行きなね」


俺たちの前に定食を置きながら、にこやかに言う奥さん。

まるで息子や娘に向けるような、優しい言葉だった。


麻紀も俺も、こんな奥さんとご主人だからあの当時から何回も足を運んでいた。

そういえば、ここで大ゲンカをしたこともあったっけ・・・・。

懐かしい思い出だ。


再び奥さんが店の奥へ戻ると、半年ぶりの定食に箸をつけながら話は再開された。

口に出さないまでも、2人とも少しも変わらない味に感動する。


「続きだけどさ」


と、麻紀。


「今、一番大切なのはその子でしょう? 私のことはボロクソに言ってくれて構わないから」

「・・・・」

「誠治は不器用だからね。彼女にだけ誠実に話してくれれば、私はそれでいいよ」
 

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