不思議な家のアリス


「…え…?」



熱心に説明する途中、立ち上がった黒木くんの体を見て、驚きのあまりに間抜けた声が漏れた。





私の思考を止めた犯人は、彼の身体中にある、酷い傷痕達。




暗い布団の中では見えなかったけど、わき腹には刃物で切られた様な、大きな縫い痕。

身体中にある、茶色く変色した皮膚は火傷の痕に見える。



それが余りにも痛々しくて、思わず目を背けた。




「……あ、ワリィ。」




そんな私を見て、黒木くんはポツリと呟き、床に落ちていたシャツを羽織う。





「喧嘩で…出来たの?」

「……どうでも良いだろ。」



一瞬、彼の顔が苦痛そうに歪んだ。


返す言葉も無く、「ご飯出来てるから、下りて来てね。」とだけ言って部屋を出た。





―パタン




廊下に出てからも、彼の傷痕が脳裏から離れない。



普通、喧嘩で火傷なんてするの?

刃物なんて持ち出すの?




"不良"の世界と言うものは、私の想像を遥かに越えているのものなのか。



バカ3人はいっつもバカだし、黒木くんは物静かで圭吾さんは落ち着いてるし…何となく、身近に感じ始めてた。



でもやっぱり、彼等は紛れもない"不良"なワケで。



一体、彼等はどんな世界にいるんだろう…―?


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