不思議な家のアリス
「うん、何とかなった。ありがとう。」
私が当たり障りなく言うと、「なら良かったぁ~。で、どーすんのぉ?」と更に詰め寄ってきた。
この子は、気配りってものを知らないのかな。
第一、何でそんなことあんたに言わなきゃいけないの。
答える気になれず、私が黙っていると、
「ゴメンね、ちょっと美波と話したいから良いかな?」
一人の女の子が割って入った。
小学生からの親友の、静だ。
「はぁ?私、有栖川さんと話してるんだけどぉー」
「うん、ゴメンね。美波、ちょっと来てー?」
静に手をひかれ、そのまま廊下に出た。
静はおっとりしてるけど、人の気持ちがよく分かる、優しい女の子。
「ありがとね、助かった。」
「何が?本当に話したい事あったんだよ?ほら、これ見て。新作のお菓子買って来ちゃった。食べよ?」
にっこり笑って、私を元気付けてくれる静。
何も聞かないのが、彼女の優しさ。
パパとも仲良かった静は、お葬式でずぅっと泣いていたのに。
きっとあのギャルの何倍も色んな事が気になっているハズなのに。
「ありがと、静。」
もう一度お礼を言うと、彼女はまた笑って。
「早く食べよ!」とお菓子の封を切った。