不思議な家のアリス
「こういう時のアイツはゲロゲロ吐くまで飲んで悪酔いするから、今日は近寄らねぇ方が良いぞって事。
じゃねぇと、処女奪われちまうぞ?」
ケラケラ笑いながら言う勇志くんの顔には、微かに滲む寂しさの色。
寂しさは伝染する。
悲しみも伝染する。
その傷が深ければ、深い程に。
同情や、哀れみのそれとは違う、傷を負った者達の共鳴。
「暗くなってんなよ?バーベキューはワイワイ騒がねぇとな。お、この肉なんか良いじゃねぇか。」
…そうだ。
私が暗くなる所じゃない。
私がツラいとき、秋夜は上手に泣かせてくれた。
励ましてくれた。
今度は私が、秋夜を元気付けてあげる番だよね―。
「…お肉じゃなくて、野菜選んでよ。」
「ヤだ。」
「食べなくても良いから。」
「あると圭吾に食わされんだよ、無理やり。あのじじい、最近説教臭ぇからな。」
「あはは。圭吾さんっぽい。」
「笑い事じゃねぇよ。」
そう言いながら、ビールを2ケース肩に乗せる勇志くん。
未成年がアルコール何て…って思うけど、今日は許してあげよう。
秋夜がどんなに悪酔いしても、今日は止めないで飲ませてあげよう。
レジで会計を済ませ、家へと戻った。