だから感謝してる

この前久しぶりに見つけ出してしまった



十年ぶりにみた奴の横には綺麗な人がいて



あれだけ嫌がっていた

人だかりの多いデパートに居るところを



奴は相変わらず無口なのは変わってないみたいで



昔ひたすらしゃべり続けいた私とは対照的に



その横で静かに座っている彼女を見て


少しだけ笑みがこぼれた






「奈美、行くよ?」



「あ、うん」



奴は私に気付くことない

そりゃあ社会人にもなったし


あの頃の面影は何一つなくなっていたのだから
仕方ない


奴が伸ばせとしつこく言われたボブヘアは


今じゃサラサラのロングヘア



化粧だってするようになったし


スト系だった服装から

今では奴好みの女らしい服装に当てはまっている



未練がないと言ったら嘘になるけど


だからと言って今更戻りたいなんて言う気はない


人一倍寂しがりやだった私は

今じゃメールすら嫌いな冷めた女




あれほど温もりを求め続けた愛も


愛してると言われるたびに重いと感じてしまうような最低女




奴と別れたのが秋で
秋になるのが嫌だったのも



今ではあの切なく寂しい空気がなんだか懐かしくて

秋が来るのを待ち遠しく感じてしまう



もう少しで短い夏も終わる
彼と別れて十年目の秋が訪れる


そのたびに私は想い出すんだろう



最後の帰り道

人前で手を繋ぐのをずっと拒んでいた奴が



泣きながら怒る私の手を
ずっと離すことなく




遠回りをして家まで送ってくれたことを



「今日も頑張りますか、ね」


「いつも頑張って下さいよ」


「うるさい」



にっこりと胡散臭い笑いを浮かべる目の前の男に

軽く蹴りを入れながらも
差し伸べられた手を掴む私

そっと握り替えしてくれる


今日もまた前に進む





「肉食べたい!」


「昨日も食べたのに?」
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