スリー・イヤーズ・カタルシス


おれは



スウェットの入った袋を



彼女の方に



さっきからずっと



差し出していて。



おれの腕は思ったよりも



根性なしで。



もう限界かもと思ったとき



腕の先がふっと軽くなった。




同時に



ビニール袋を開ける



わしゃわしゃとした音が



耳に聞こえた。




おれは腕を下げて



目はつぶったまんま



彼女には背中を向けた。



だって



おれが見てたら



彼女が着替えにくいだろ?



おれのそのときの願いは



たったひとつ。



彼女が



そのスウェットに



着替えてくれますように。



それだけだった。



彼女は着替え始めたようだった。



おれは嬉しくて



彼女の着替えている姿を



この目で確認したくなったけど



いやだめだ



今振り返ったら



彼女はまた



怯えるに違いないと思って



我慢したんだ。



しばらくは



彼女が服を着替えているらしい音が



おれの耳に届いた。



おれは



嬉しさのあまり



叫びたくなったがこらえた。



これから



いくつもの難題が待ち受けていることが



目を閉じているうちに



わかってきたからだ。



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