スリー・イヤーズ・カタルシス



そのうち



音が鳴りやんだので



きっと着替えが終わったのだろう



と思ったけど



おれはやはり



目を開けて振り返ることが



できなかった。



かと言って



彼女に何を話しかけていいのかも



わからなかった。



そもそも



話しかけることに何の意味があるのかも



疑問だった。



おれはただ



背中を向け



目を閉じて



じっと立っていたんだ。



すると彼女がかすかな声で



「ありが……と」



と言ったので



おれは涙が出そうになった。



つらいのは彼女の方なのに……



おれは



「その水、飲んでいいから」



と言うのが精一杯だった。





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