スリー・イヤーズ・カタルシス
電話を切ったあと
彼女はおれに携帯を返しながら
「ありがとう……」
とつぶやいた。
「きのうは、ごめんなさい……」
「いえ……」
たぶん
彼女はおれに叫んでしまったことを
「ごめん」
と言っているのだろう。
だけど
昨夜の彼女の叫びは
男という存在全体にたいして放った叫びである。
彼女は、何も、悪くない。
「あの、もしよければ。お礼がしたいので、ついてきてもらえる?」
「え……でも、たいしたことしてないですし」
「あのね、顔……見せてもらえるかしら……」
予想していないことばかり言う子だった。