きっとここで君に出会うために




それはずっと鍵がかかっていた部屋。



お姉ちゃんが使っていた部屋。


あの部屋に電気が着いたのはお姉ちゃんが死んでから一回もない。


これからも絶対にないと思っていた。



お母さんが入ったってことだろうか。



そっと扉に近づいて静かに開ける。



「‥‥お母さん」


やっぱりその部屋にいたのはお母さんで、

ただ何をするでもなく窓の外を眺めていた。



「お母さん」


もう一度さっきより少し大きな声で呼びかける。



静かに振り向いたお母さんは、

思っていたより穏やかな目をしていた。


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