ストロング・マン
「え・・・と?」
「お前は難しいこと、頭で考えすぎ。
お前はそんなに最低なやつじゃねえよ。自分なりに精一杯やろうと頑張って、でもなかなか上手く出来ないだけだろ?」
修也がこんなことを言ってくれるなんて。自分を認めてくれる言葉って、なんでこんなにも嬉しいんだろう。
それに昔からの自分を知っている修也の言葉だからこそ、胸に響くものがあった。
修也の言葉で幾分冷静さを取り戻した私ははっと我に返り、頭の上の修也の手をそっとはらいのけた。
「ごめんね、こんなこと聞かせて。
でもそう言ってもらえて嬉しかったよ。ありがとね。」
今できる精一杯の笑顔を返す。修也を安心させたかったのだ。
いつまでもダメ女だと思われたくない。
「これからちゃんと考えてみる、彼氏のこと。
またグルグル考えて良くない方向になっちゃうかもしれないけど。
・・・ほんとは、素敵な恋愛がしたいだけなんだよね。奈美みたいにさ。
こんなあたしのこと、受け入れてくれる人いるかな」
「お前さ、俺には言えたじゃん。不満とか、今思ってること。
だから、ちゃんと向き合える。大丈夫だよ。
それに、俺の方がお前のこと分かってると思うよ。」
えっ、なにそれ。
驚きの余り声が出ない私の顔を見てふっと笑い、
「終電時間やばいから、帰るわ」
なんて、軽く手を上げてさっさと1人で帰ってしまった。
取り残された私は当然その場に立ち尽くすしかなくて。
私を励ましてくれたのは間違いないんだろうけど、逆にかき乱されたような複雑な気分だった。