ストロング・マン


電話を持つ手が少し震えた。
いつもの私は尚からの連絡を待つだけで、自分からなんてしばらくしていなかったから、もしかしたら尚はいつもこんな気持ちだったのかもしれない。
いつだったか、少し寂しそうな顔してたし。


電話をかけて5コール目で尚に繋がった。


「もしもし?」


「あ、尚。急にごめんね。
今大丈夫だった?」


「うん、全然平気!郁からかけてくるなんて珍しいね。
嬉しいよ。」


電話越しでもすごく嬉しそうにしているのが伝わってくる。
尚の笑った顔が想像できて、私の顔まで綻んだ。

電話もらえるってすごく嬉しいことなんだよね。
最近の私はそれに慣れすぎてすっかり忘れてしまっていた。



「三直体制も終わったし、会いたいなと思って。」


「ほんと?終わったばっかりで身体辛いかなって思ってたから連絡しなかったんだけど。
郁さえよければ俺は大丈夫だよ。何時からにしようか?」


土日なのに連絡ないなって思ってたけど、そういうことだったんだ。
こんなこと、自分から動かなかったらわからなかった。



お互い準備する時間を考慮して会う時間を決めて電話を切った。
尚が家までまた迎えに来てくれるそうだ。本当に優しい人だなあ。



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