ストロング・マン
すごくドキドキしているのが分かる。これが自分のなのか、修也のなのか。
ううん、これは2人の音だ。自分だけがドキドキしている訳じゃないって分かると、どうしてこうも嬉しくて、さらに緊張して、でも安心するんだろう。
修也の鼓動の音と熱すぎる腕に、私は完全にノックアウトされ、言葉を発することが出来ずにいた。
修也の腕の中でどれくらいの時間が経っただろう。安心したせいか、涙が引いていたことに気づいた。
「大丈夫か?」
私を抱く腕の強さはそのままで修也が私に尋ねた。頭上から聞こえてくる声音がすごく優しくて、心地いい。
「うん。もう大丈夫だよ。」
私がそっと修也の胸を押すと、2人の間に少しだけ距離が空いた。でも、修也は私の腕を掴んだまま私を見ているから恥ずかしい。
でも、言うなら今しかない。
意を決して顔を上げて、修也を見つめた。
「郁、好きだよ。」