粉雪
抱きしめ、重ねた唇から押し入ってくる舌に、息遣いが漏れる。


上に乗る隼人に、嫌でも心臓が早くなって。



『…ちーちゃん、大丈夫?』


「…うん…。」



本当はまだ、怖かった。


けど、隼人に嫌われたくなかったから。


あたしの言葉を合図に、スカートの中に手が入り、一番敏感な部分を刺激した。


だけど気持ちとは裏腹に、あたしの体を知り尽くした隼人の指に感じて。



こんな自分が、嫌で仕方がなかった。


だけど隼人は、それを含めてあたしを愛してくれてるから。


あたしだって、本当は弱い隼人を、それでも愛してるから。


もぉ、あたし達は引き返せない。


お互いなしじゃ生きてさえいけない。


そんなこと、分かりきってるから。


だから、これで良いんだ。


これしかないんだ。



隼人はあの日を消し去るように優しく抱いてくれて。


まるで罪を償うように、忘れさせるように行為を繰り返す。




薬指に指輪が輝き、首にはネックレス。


隼人の好きな香りを纏い、隼人の好みの髪型に変えた。



誰もあたしのことを知らない。


でも、隼人があたしのことを“自分の女”だと思ってくれてるなら、

それだけで良かったんだ。



親も、友達も、何も要らない。


可愛い赤ちゃんも、幸せな家庭も、何も要らない。


ただ、隼人が傍に居てくれるだけで良かった。



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