粉雪
少しして、一台の車が駐車場に入ってきた。


隼人と車種は違うけど、同じように黒塗りのセダンだ。


あれが、“マツ”の車なのだろう。


適当に車を横付けし、男が一人車から降りてきた。


少し緊張するあたしを横目に、隼人はその場所に足を進める。




『―――遅ぇよ!
軽く寝るところだったじゃねぇか!』


『…スンマセン。
手間取りました…。』


頭を下げながらこちらに向かって歩いてくる男は、

チンピラみたいな格好をしていた。


年は、あたしと変わらないように見える。


だけど目つきが悪く、近寄りがたいオーラさえ持っていた。


困ってしまったあたしに笑い掛け、隼人はマツに向かって口を開く。



『…紹介するわ。
前から話してた、俺の女だから。』


「…あの、どうも…。」


一応、頭を下げてみた。



『…どうも。』


男も同じように、あたしに軽く会釈した。


だけどその目つきの所為なのか、少しだけ睨まれている気がして。


あんまり好きにはなれなかった。



『…で?
捕まえた?』


『ハイ。』


隼人の目つきが変わり、マツは再び自分の車に向かった。


“捕まえる”って、誰を?


そして、あたしがこんな場所に呼ばれた理由は何?


あたしを包み込む予感は、決して良いものではなくて。


鼓動は、刻むように脈を打つ。



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