粉雪
―ガチャ…

『―――お帰り!!
どこで油売ってたんだよ?』


あたしの帰宅を確認した隼人は、読んでいた雑誌を机の上に投げた。



「…帰ってたんだ?
ごめん、ちょっと新人の子と話してたから…。」


『何か、疲れ切ってる。』


あたしの荷物を取り上げた隼人は、心配そうに顔を覗き込んできた。



「…うん、ぶっちゃけ疲れた。
第一、あたしに新人の指導なんて向いてないんだよ…。」


『ふ~ん、大変だな。
辞めれば?仕事。』


「…隼人が辞めて欲しいなら、そーするよ。」



だって、あたしは“隼人の女”だから。



『…俺はちーちゃんが苦労する姿見たくねぇんだよ。
でも、ちーちゃんの望んだように生きれば良い。』


「…ありがと…。
でもあたし、大丈夫だから。」


精一杯の笑顔を向け、キッチンに入った。



『…ごめんな?
俺が仕事まで取り上げたら、ホントに愛人みたいになるもんな。
ちーちゃんは俺にとって、そーゆーんじゃねーから。』


煙草を咥えた隼人は、少し悲しげに言ってくれた。


その顔に、あたしまで胸が締め付けられそうで。



「…ありがとね、隼人。
でもね、あたしは愛人でも何でも良いよ…。
隼人が傍に居てくれるんなら。」


一瞬驚きの表情を浮かべた隼人は、伏し目がちに笑顔になって。



『ははっ!
言われなくても、ストーカーの様に張り付いてますから。』


「あれ~?
眉毛のない女は、ストーカーしないんじゃなかったっけ?(笑)」


『…言ったっけ?そんなこと。
まぁ、ちーちゃん綺麗になったしな。
ストーカーしてでも俺の傍に居てくれるんなら、何でも良いよ。』


「…馬鹿だね、隼人は…。」


その言葉に、少しだけ笑った。



『ちーちゃんのが馬鹿じゃん!(笑)』




そうだね。


未だに隼人のことを思い続けてるあたしの方が、きっと馬鹿なんだよね?


でもね、忘れる方法なんて、教えられてなかったから…。




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