粉雪
「…何で…シンナーなんか…!」


『…ちーちゃんが離れていくのが怖かったんだよ…!』


そして隼人は、唇を噛み締めた。


『…限界だった。
毎日あの女の機嫌取って…。
アンパン喰う以外なかったんだよ…!』


「―――ッ!」



あたしの存在が、隼人を苦しめてたの…?


あたしの所為で、隼人はシンナーなんかに手を出したの…?




「…ごめん、隼人…!
あたしが居なかったら、隼人は苦しまずに済んだんでしょ?」


『…違うよ、ちーちゃん…。
ちーちゃんは何も悪くないから…。』


優しく笑う隼人に、涙が込み上げてきた。



『…ずっと、ちーちゃんが影で泣いてたのも知ってた。
苦しめてたのは、俺の方だ。
なのに俺は、ちーちゃんを解放することが出来なかった…。』


「…違っ…!
あたしは隼人のこと、愛してるんだよ…!」


『…うん、俺も、愛してるから…。』



隼人に“愛してる”なんて言ったのは、いつ以来だった?


忘れてたんだ。


あたしはこんなにも、隼人を愛していることを。


ただ愛し合っていただけで、こんなにもお互いを傷つけて。


そんなことが、ただ苦しかった。



『…俺を狙ってたのは、獅龍会の河本だ。
多分、そろそろ殺されるだろう。』


「―――ッ!」


その事実に、言葉を失った。


嘘だと信じたかった。


だけど隼人はあたしの瞳を捕らえ、ゆっくりと言葉を続ける。


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