粉雪
『…俺は、明日飛ぶから。
ちーちゃんは、残った方が良い。』


「…何、言ってるの…?」



明日、隼人はいなくなるの…?


“残る”なんてそんなこと、出来るはずがない。


今更、別々の道なんか歩けるはずがないんだ。



「…あたしも行く…!
あたしはいつまでも隼人と一緒だって言ったじゃん!!」


『…ダメだ。
飛んだって、命の保障はない。』


「…何で…そんなこと言うの…?
今更あたしのこと捨てないでよ!!」



だったら何で、もっと早くに捨ててくれなかったの?


今更そんなこと言うなんて、卑怯だよ…。



『俺だって、ちーちゃん居なくなったら生きて行けねぇよ?!
けど、今ならまだ引き返せる!
ちーちゃんは、ちゃんとした道に戻るんだ!』


「―――ッ!」



隼人に捨てられたら、あたしは生きて行けない。


隼人と付き合った時から、引き返すことなんて考えてないよ。




「あたしは、隼人と一緒なら地獄に落ちたって良いよ。」


覚悟を決め、隼人の目を見据えた。


瞬間、隼人は戸惑うように俯いて。


少しの沈黙の後、ゆっくりと顔を上げた。


そして再びあたしの瞳を捕らえ、言葉を紡ぐ。



『…わかった。
後悔しないんだな?』


その言葉に、強く頷いた。



『…ありがとう、ちーちゃん。
ちーちゃんのことは、何があっても守るから!』


「うん。」



あたしには何も、捨てるものなんてない。


隼人の生きる道が、あたしの生きる道なんだ―――…



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