粉雪
お互いに、これからの未来を想像することが怖かった。


だからだた、求め合った。


隼人は、“小林隼人”として、あたしを優しく抱いてくれた。


隼人は一生、あたしだけのものだ。


犯罪者でも、人殺しでも良い。


幸せな家庭も、可愛い赤ちゃんも要らない。




あたし達の最後の晩は、やっぱり雨が降り出して、

静かな部屋にあたし達の吐息と、雨音だけが響き渡った。



何がいけなかったの…?


あたしの選択は、間違っていた?




『…ごめんな、ちーちゃん…。』




隼人だって分かってたんでしょ?


あたしの選択肢が、他にないことを。




『…本当は、ちーちゃんを幸せにする為には、置いていかなきゃいけないのは分かってるんだ。
でも俺は、ちーちゃんと生きて行きたい。
ごめんな?
本当に、ごめん…。』




あたしはただ、本当は凄く弱い隼人を見捨てることが出来なかっただけだよ?


愛してたから、それでも良かった。


今まで本当に辛くて、そして苦しかったけど。


それでも今度こそ、二人で幸せになりたかった。


なれるんだと、信じたかったんだ。


謝るのはあたしの方だよ。


ごめんね、隼人―――…




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