粉雪
「…でも、アンタだけには言われたくないから。
背中のラクガキ、アンタこそ勿体無いじゃん!」


『―――ッ!』


瞬間、マツは目を見開いた。



『…つーか、お前こそどこで見たんだよ?』


「…見なくてもわかるよ。
アンタ、年中長袖じゃん。」


『ハッ!よく見てるな。』


そう言ってマツは、お酒を一口口に含んで。



『…俺、隼人さんのトコ行く前は、極道だったから。』


「マジ?!」


マツの告白に、耳を疑った。



『…族やってて、その流れで自然と極道モンになった。
でも、人間殺し損ねてな?
組から逃げるようにあの街に行ったんだ。
そこで、隼人さんに拾われた。』


マツは思い出すように、遠くを見つめた。


マツもきっと、色々なものを背負ってるのだろう。



「…そっか。
じゃあ、アンタも一緒なんだ。
あたしも隼人に拾われたようなもんだから…。」


『…あの人、拾い喰いしすぎなんだよ。
よく腹壊さなかったよな。』


「ははっ、アンタも隼人居なくなって、態度大きくなったね。
てゆーかアンタ、隼人とヤってたの?(笑)」


『死んでもヤるかよ!
例え話だっつーの!』


口元を引き攣らせるマツの顔は、結構面白いから。



「わかってるってば!
イチイチ怒らないでよ~!(笑)」


少しだけ笑い、慣れすぎたお酒を流し込んだ。



『…つーか、酒強すぎ!
千里といい、隼人さんといい、何で酒が強いんだよ?
付き合わされる方が先に潰れるっつーの!』


「あははっ!
でもあたし、ホントは弱いんだよ?
隼人が死んでから、酔えなくなっただけ。」


『…心配さすようなこと言うなよ…。』


あたしを見たマツは、それだけ言って。


また沈黙が支配した。



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