粉雪
『…ごめんな…。
お前のこと抱き締めてやりてぇけど、お前が今欲しいのは、俺なんかじゃねぇだろ?
俺が優しくしたら、お前はもっと辛くなるのわかってるから…。
俺はお前のこと、意地でも自分のものにしようなんて考えてねぇから…。』


マツはあたしの方を見ず、顔を覆った。


マツは今も、あたし達を見守り続けてくれている…。


マツがあたしに手を貸したら、隼人の温もりなんて忘れてしまいそうになるから。


そしたらあたしは、隼人に対する罪悪感で苦しむだろうから。


あたしは、マツまで苦しめてるんだね。




「…ごめっ…。
マツ…ごめん…!」


あたしにはただ、謝ることしか出来なくて。



『…良いよ、何も言うな…。』


マツの搾り出すような声が、胸を締め付けた。



「…本当はずっと、不安だった…。
あたし、隼人に愛されてる自信なんてなかった。
何であたしなのかもわからない。
あたしは隼人のために、何が出来た?」


『…隼人さんも同じこと言ってたよ…。』


言いながら、マツはあたしの体を支えるようにして椅子に座らせてくれて。



『…でもな?それって結局みんな一緒なんだよ。
人の心なんて誰にもわかんねぇから…。』


代わりにマツは、あたしに背を向けるようにして立ち上がって。


『…お前ら二人は、一生あの部屋に閉じこもって生きていくべきだったんだ。
でも、そこまでガキじゃねぇだろ?
結局生きるためには金が必要で、隼人さんはあーゆーことしか出来なかったんだ。』


マツは冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、

そしてそれを、あたしに手渡した。


ひんやりとした感覚が、指からあたしの熱を奪う。




「…今更聞かされても…全部遅いね…。」


『…そうだな…。』


マツはそれ以上、何も言ってはくれなかった。




『…前の日、何があったか知りたい…?』


マツの言葉に、コクリと頷いた。


もぉ、全部知りたかったから。




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