粉雪
『…本当に、何を聞いても驚かないな?』


確認するように言うマツに、あたしはもぉ一度強く頷いて。


ゆっくりとマツは、思い出すように言葉を続けた。



『…昼頃、隼人さんのマンションまで迎えに行ったんだ。
そして、日雇い労働の外国人に金を渡し、河本を狙わせた。』


「―――ッ!」



“飼い犬に手を噛まれた”


河本が言ってた言葉を思い出した。




『…でも、それもすぐに失敗に終わったよ。
証拠はなくても、隼人さんがやったってことがバレるのは、時間の問題だった。
まぁ、河本を狙ってる人間なんてたくさんいるし。
だから、飛ぶまでの時間は稼げたんだけど。』


そしてマツは、あたしの方を見ずに言葉を続けた。



『…そしたら、あの女が“会いたい”って言ってきた…。』


「―――ッ!」


『…隼人さんは、最後に会いに行ったんだ。
あの時の目つきは、ホントにヤバかった。
俺が居ないと、人殺しでもやりそうな目ぇしてたから。』


マツは自分の分のミネラルウォーターを取り出し、それを流し込んで。


パタンと冷蔵庫の閉まる音が響く。




『…最後に隼人さんな、“タップリ利用させてもらったよ”って吐き捨てたんだ。
そして、“いつか必ず、お前を殺す!”って。』


「―――ッ!」



…あたしとの約束…?



『…安西香澄も、その時初めて隼人さんの本性を知ったんだよ。
そしたら、泣きながら縋り付いてたよ…。』


そして再びマツは、あたしに背を向けて。



『…“あたし、あなたの子供がいるの!”って。
“だから千里ちゃんと別れてよ!
今の言葉、嘘でしょ?!”ってな。』


「―――ッ!」


頭が真っ白になった。


子供って…そんな…!



『…そしたら隼人さんな、アイツの腹、蹴り飛ばしたんだ。
キレたように殴りかかって。
結局、あの女の最後の足掻きも、嘘だったってわけだ。
流産なんて…しなかったから…。』


「―――ッ!」



最期の日に見た香澄は、ボロボロだった…。


あれは、隼人がしたものだったの…?



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