粉雪
『…隼人さんが、何でそこまでキレたのか正直わかんねぇ。
お前との子供も…出来てたんだろ…?
何でおろさせたんだよ…?』


マツはためらいがちに聞いてきて。


ゆっくりとあたしは、言葉を探した。



「…“犯罪者の子供、産ませる訳にはいかないから”だってさ。
自分も犯罪者の子供だから、同じ道を辿らせたくないんだろうね。
その所為で、お母さんが自殺したらしいから、あたしが死ぬとでも思ったんじゃない?」



これは、あの手紙を読んであたしが推測したことだ。


だけど、そうまでして隼人は、あたしとの日々を守ってくれていたんだ。




『…そっか…。
多分、本当に好きな女に子供おろさせたのに、好きでもない女が自分の子供身篭ったなんて許せなかったんだろうな。
全部、お前を愛してたからした行動だろう…。』


「…でも、本当に子供が居たとしたら、悲しいね…。」


目を伏せた。


こんなことにならなければ、香澄も犠牲にはならなかったのに。



『じゃあお前は、あの女だけ隼人さんの子供産んでても許せたのか?!』


「…それとこれは別だよ…。
客観的に見たら、ってだけ。
あたしが子供が出来たとき、産む為に別れてれば良かったのかな…?」


『…千里、結局それだもんな…。
俺がどんなに何を言ったって、結局は自分を責めるんだ…。』


マツは金平糖の瓶を見つめて。



『…何で生きてる人間ばっか、傷つかねぇといけねんだよ…。
“自分の所為だ”って、責め続けて…。
…あの人…卑怯だよ…!』


悔しそうに呟く横顔に、あたしはまた目を伏せた。




『…全員大クラッシュだよ…。
隼人さんが今日降ってるみたいな雪で、その所為でみんながスリップして傷ついた。
大事故して、深い傷を負ったんだ…。
誰も、忘れることが出来ないような…。』


皮肉を込めた言い方で、マツは窓の外を眺めて。


そんな悲しいこと、言わないで欲しかった。



「…雪が降って、喜ぶ人間もいるよ…。」


『…お前みたいな、な。』





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