粉雪
♪~♪~♪

次の日、仕事を終えると、隼人から電話が鳴った。


―ピッ…

「はーい♪」


『…お疲れ、ちーちゃん…。』


テンション高く通話ボタンを押したあたしとは正反対に、

電話口からはため息交じりの声が聞こえる。



「…何か、声暗くない?
大丈夫?」


『ん~、ちょっと前に起きた。』



間違いなく、今は夜の10時だ。



「…何やってたの?」


『朝一で家具屋が荷物持ってきて、そんで起こされたの~。
何か、模様替えとか色々やってたら、超熱中しちゃって!
夕方から、マジで爆睡してた!(笑)』


「あのガラステーブル来たんだ!」


思い出すと、嬉しくなる。



『…ついでに絨毯とソファーまで買っちゃった。
見に来る?』


「行く!!」


『じゃあ、そこで待ってて?
迎えに行くから!』


部屋がどんな風に変わっているかを想像し、

バイト終わりなのにテンションが上がってしまった。


想像するだけで緩む口元を直す術なんて、今のあたしには持ち合わせてはいない。




『酒井、男だろ?』


「―――ッ!」


瞬間、驚いて振り返った。


そこにはニヤついた目で見るマネージャーの顔がある。



「もお、ビビらせないでくださいよ!
違いますって!(笑)」


『隠さなくていいだろ~?
しかし、やっと酒井にも男が出来たか!(笑)』


一人で納得しているのかマネージャーは、腕を組んでウンウンと頷く。


だけどあたしは、そんな姿に口元を引き攣らせた。



「…ジャーマネ、ウザイ!
お先っす。」


『あははっ!お疲れ~!』



マネージャーはいつも、あたしに彼氏を作らせようと、

バイト君を紹介しまくってくれていた。


隼人のことはあまり聞かれたくはないけど、紹介がなくなるのは喜ばしいことだ。



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