好きだから、別れよう。



花火が終わり、見物客がぞろぞろと動き始めた。



「ヤバイ、早く移動しないと渋滞にはまるぞ!」



マサキさんは車を運転し始めた。






もう、帰らなきゃいけない…?






前を見ながら、マサキさんが言った。



「もう送って行った方がいいよね?ご両親が心配するでしょ?」



本当、マサキさんは優しい人なんだと思う。


私のことだけじゃなく、私の親のことまで考えてくれる。



でも…

私は、窓の外を見ながら答えた。



「家に帰っても誰もいないから…」







マサキさんが私を見たのがわかった。




「…うち、お父さんいないんですよ〜!私が小さい頃離婚して…
お母さんは残業したり夜もパートしたりで…帰ってくるの遅いから…」



出来るだけ明るい笑顔で言ったのに、マサキさんは哀しそうな目をした。



そして、



「じゃあ、少しだけ夜遊びな!」



と言って、私の家と逆の方向へハンドルをきった。







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