先生
朝から学校はバレンタインデー一色。
先生に見つかったら没収されるかもしれないのに、みんなあちこちでチョコレートを持っている。
教室も甘い匂いでいっぱいだ。
受験を間近に控えたピリピリした受験生でも、この日だけは特別。
中学最後のバレンタインだから、みんな気合いが入っている。

彩花は学校につくと、友達みんなに友チョコを配り、ひとり席についた。
そして、引き出しから時間割を引っ張りだす。
今日は体育の授業がない。
だから、渡すチャンスは一限目の体育の時間しかない。
彩花は大きく深呼吸をして、鞄の中にあるチョコレートを見た。
ピンクにラッピングされたチョコレートは、あと一時間後には、もう先生の手の中にある。
そう考えると、さらに心臓が早くなって、ぎゅっとなって、何ともいえない気持ちになった。




< 90 / 118 >

この作品をシェア

pagetop