空と僕とキミと。
「た、ただいま……」




 家に人が居るところに帰るのはかなり久しぶりで戸惑う。

 だが。




「やっと帰ってきたか。遅いぞ、浅田悠斗」




 ……なぜ俺の名前を知ってる?

 そしてなぜ、来客用の菓子を頬張っている?

 遠慮、という言葉はどこにいった?




「飯が無かった。ちょうど洋菓子を見つけ出したから、貰った」

「…………」




 いや俺が飯作らなかったのも悪かったけど。

 ……だから遠慮、という言葉は……?




「ああ、名前はそこにあったテストの答案用紙を拝見した」




 ……そこにあったのは数学のテスト用紙で、赤いペンで〝89点〟とかかれていた。

 割と良い点数だったから別に見られても良かったけど、だから遠慮――





「……キミの、名前は」

「里沙。……里沙だ」




 名字は?

 と聞きたかったが、そのまま押し黙ってしまったので聞くに聞けない。




「そ、うか。分かった。――夕食にしようか?」

「……ああ」




 表情は分からないが、嬉しそうな声だった。

 ……少しだけ、待ってみよう。きっと里沙から話してくれるだろう。
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